2011-02-24

教育工学会冬の合宿(-「質的データを分析しよう! -質的研究におけるデータ分析入門-」)に参加してきました

2/19-20に開催された教育工学会の冬の合宿に参加してきました。テーマは
  • 「質的データを分析しよう! -質的研究におけるデータ分析入門-」
です。正直、質的研究というものを漠然としか耳にしたことはなく、個人的には
  • 従来の定量的な研究とは違う研究アプローチ?
  • 教育工学に関連する?
  • 難しいアプローチ?
という認識しかありませんでした。いちおう何年か前に関連する本を買ってさっと目を通してみたものの、いまいちピンとこず、積ん読状態で本棚に眠っている状況。で、今回、質的研究における質的評価を支援する手法であるSCATというツールについて、合宿での実践を通して理解するという趣旨だったわけですが、思っていた以上の収穫がありました。

質的研究とは何か?
そもそも質的研究とは何か?上述のように私の質的研究に関する認識は乏しく、ただなんとなく、
  • 教育工学にも関連するアプローチであろう
  • システム開発系研究をしている私にも何か参考になるのかもしれない
という程度の興味での参加だったのですが、合宿までの予習として与えられていた教育システム情報学会誌の解説論文
を読むことで、その認識はガラリと変わりました。

自分の研究(教育工学)って質的研究そのものじゃないか?
ちょっと大げさな表現にしましたが、率直にまさにそう感じました。少なくとも論文中のページに出てくる質的研究のアプローチですが、これはまさに自分の研究アプローチそのもの。私が学生時代に先輩や先生に教えられてきたのは、「理論武装」という名の下で開発するシステムが採用する支援アプローチを決定する際、対象領域の分析などを徹底的にしてきました。これは上記論文で書かれている「質的研究の手続き」と全く同じ。ただ、評価については人間という系が入ってくることでの、定量的な評価の難しさが出てきます。しかも試用する環境もなかなか用意できなかったので、研究室内での試用をベースにした評価になりがちでした。そのような評価から客観性や一般性をどのように導いていくのかがとても難しい問題でしたが、質的研究はそこに一歩踏み込んでいると感じます。

工学という名の下での定量的評価からの解放
教育工学というのは領域がとても広いですが、私は情報工学の技術を適用する研究アプローチに属します。いわゆる工学というこの分野は一般的には「定量的評価」です。特に私がいる電気電子という学科ではその典型で、新しい技術を提案しデータをとってその結果から有効性を検証します。こういう環境にいると、どうやったら定量的なデータが取れるのだろうか?自分がやっているこの評価方法はおかしいんじゃないだろうか?と自問自答する事が多いのです。とくに単純にアンケートというのを評価に持ってくるととても異質に感じるわけで、もっと定量的に評価しなきゃ、、しかしどうすれば、、、と悩みます。しかし質的研究では、人間という系が定量的に扱えないものであることを認めた上で、それを定量的なデータとして変換、評価していくというアプローチです。私にとっては何がなんでも「定量的に、客観的に」と考えてしまっていましたが、その呪縛から解放してくれたように感じました。

システム開発研究に適したアプローチは?
質的研究のアプローチを実践することは簡単ではなく、そのアプローチについてのより深い勉強とそれなりのセンス、経験が必要になってくるでしょう。というか、私自身「質的研究」に初めて触れたばかりですから、そう簡単に話は進まないでしょう。質的研究に関する勘違いや、誤解は多々あるとは思います。また、システム開発系の研究では、「システム実装」というプロセスが入ってきますから、質的研究におけるデータ収集・分析と理論化のプロセスにどのように適用するのか?このあたりはしっかりと考えていこうかと思ってます。

教育工学の講義資料として最適かも
大谷先生の上記論文は、「質的研究」と「量的研究」の違いをとてもクリティカルに説明しています。教育工学の研究のやり方に通じるものが多々あるので、この論文をしっかりサーベィしてまとめて、このブログや研究室のサイト等で資料化したいなと思ってます。

以上、なんか合宿の報告というより、それ以前の話になってしまいましたが、それだけでも十分満足感がある合宿でした。ちなみに合宿では、グループワークでSCATという分析ツールを元に質的分析を行いましたが、これもまた面白く、また質的研究の理解にいい機会となりました。個人的にはこのSCATの枠組みを電子化(システム支援)したいなぁと思ったりしましたが、これは職業柄かもしれませんね。




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